がんばれ、ドーチャくん!
〜アンドレイ・グリャツェフ〜
とあるアイス・ショーの画像で、タラママの新弟子(なんていうと、おすもうみたいだけど・・笑)ドーチャくんこと、アンドレイ・グリャツェフくんが、見おぼえあるヤグディンの『トスカ』衣装を着て滑ってるのを見たとき、ふしぎなデジャ・ヴをかんじた。(※ちなみにドーチャとは、アンドレイの愛称です)
なんのデジャ・ヴかって・・きょうだいの“おさがり”を着た子どものころの自分の写真を見るときの、気恥ずかしいような、心あたたかいような、ちくっ☆と胸が痛むような、あれなんですよ。
タラママはいったい、どんな戦略があって、こんなことさせてるんだろう。まさかに、こんなそぼくな共感をねらっての“おさがり”ではあるまい。
前季までミーシン門下で、ビールマン・スピンをおもな武器としてきた(たぶん)ドーチャくんは、これまでつねにプルシェンコを意識してきたはず。男子でビールマン・スピンをこなせるのはプルシェンコだけ、って一般にいわれてきたからね。
今回、そのミーシンのもとを離れ、タラママのもとに走ったことで、こんどは彼は、いやでもヤグディンを意識せずにはいられまい。タラママってば「泣きつかれてNOと言えなかった」とか言ってたし。
ヤグディンのときとまったくおなじ、あいかわらず情にモロい・・☆ 「タチアナ・アナトリエーヴナ、ヤグディンを助けたように、ぼくのことも助けて。ぼくを引きとって!」とでも言われたんでしょうかね〜(笑)。
ビールマン・スピンをすればプルシェンコ、タラママのもとに走ればヤグディン、ドーチャくんは何をしても、だれかと比較されてる。
しかも戦績は、同年代のころのこの先輩2人の実績とくらべると、シロート目にも正直、かなり見劣りする(前季、ミーシン門下出身のウルマノフが「いまロシアに、ヤグディンやプルシェンコほどの有望な新人はいない。あれほどの逸材はそうかんたんには出てこない」って言いきってましたしね)。
比較される覚悟はしてたろう。彼ならではのオリジナリティをつかみ、どう伸びてゆくかは、これからの彼じしんの課題。ヤグディンをしのぐのは、カンタンなこっちゃない。いや・・おなじ門下でなくとも、だれにとっても、それはカンタンなこっちゃないんだけども。
(でもねえドーチャ、ここへ来たからには、いやでもリョーシャと比較されつづける。どうしても、それに耐えてゆかなくちゃならないの。あまり時間もないし・・そうね、ここにちょうど、リョーシャが一度しか着なかった衣装がある。寸法はお直ししてあげるから、これ着て滑ってごらんなさいな。リョーシャはこの衣装を着て、たった1ヶ月で、この衣装にふさわしいプログラムを仕上げてみせたものよ。あなたは、どこまでできるかしら?・・)
もしかしたら、そんなふうに。実力というよりは、覚悟のほど。タラママが見たかったのは、それなのかもしれない。
ある意味では、とてもむごい。たった一度きり、あの世界選のみの演技でも、録画ビデオや画像その他で、ヤグディンファンにはすでにヤグディンのイメージがしみついてる衣装だから。ヤグディンとしては珍しい、古典的な、バレエの王子さまっぽい衣装で、印象も強いし。必ずや「やだ、あれはヤグの衣装なのに! 悪いけど、ほかの子が着てるの見たくない」と反感だって買うだろう。じじつ、そう言ってた人もいた。
あらあらリサイクル? 衣装代の節約? そんな、からかい半分の見方もあろう。あるいは、まだこの子にそれほどの衣装代はかけられないってこと? かわいそ・・そんな同情の視線がよせられるだろうことも、覚悟の上だろう。
いやいや、あんがい、タラママは本当にマーマの気分で、お兄ちゃんがたった一回しか着る機会のないまま、似合わない齢ごろになってしまった新品同様の衣装を、“おさがり”として弟分に着せてやりたかっただけかも?
ヤグディンは例のスケ・アメ途中棄権のあと、しばらく脚のケガのリハビリしてた時期、コーチのアシストみたいなことしてたと聞いた。じぶんの数年前の衣装を着こみ、永遠のライバルこと、プルシェンコなみのビールマン・スピンをこなすあたらしい弟を、リョーシャ兄ちゃんは微笑して見守ったろうか?
・・いいや、それ以前に。
ようするに『トスカ』衣装は、ヤグディンでなくても似合うのだよ。ほかにもあの衣装の似合いそうな人、いそうな気がする。ドーチャくんにかぎらなくても。
『サーカス』や『革命』衣装は・・う〜ん、ビミョーかな。あの衣装で、あれほどの表現ができるかどうかはべつとして、あの衣装だけなら着こなせそうな人って、ほかにもいなくはないんじゃないかな〜。
これが『グラディエイター』衣装ともなると、世界じゅうでぜったいぜったい、ヤグディンにしか似合わない!! そう思わせるだけの確固たるイメージの定着、強烈な印象、そしてオリジナリティがある。『仮面』と『ウインター』も、そう。演技と衣装が、分かちがたく結びついてて、それは、たんなる演技の上手さなんてレベルを超えてる。ほかに着る度胸ある奴いたら、着てお客のまえで滑ってみろよ、ってかんじ。『トスカ』は、そこまではいってなかった。あるいは、そこまで熟す時間がなかった。私には、そう思える。だから・・かな?
結論をいえば、ドーチャくんの『トスカ』衣装すがたは、私としては好感が持てた。冒頭で書いた“おさがり”への感傷をさしひいてもね。
なぜって、ロミオみたいだもの。ロミオってたしか、十代だったはずだし。どっちかっていうとシェークスピアの世界の、というより、学芸会のロミオみたい、ほほえましい(^o^)゛ ヤグディンが着てたときは、ロミオは連想しなかったもんね。恋仇にだまされて死刑になる、トスカの恋人カヴァラドッシだったっけ・・。
着る人によって、こんなに印象もちがってくる。それもドーチャくんの個性ってものだろう。まだ機会がないけど、滑ってるすがた見られたらまた、印象変わるかもね。ひとつ楽しみの増えた気のする、今シーズンです。
後記:その後、ドーチャくんは03−04世界Jrで優勝し、ロシア勢の底力を見せつけた。
04−05世界Jrで優勝した浅田真央ちゃんのFP衣装は、伊藤みどりの“おさがり”を、お直しして着てるそうだ。
期待され、自信ある選手だからこそ、名選手の“おさがり”を着る権利がある。いまは、そう思ってる。
でも、この記事のように思った時期があったのもたしかなので、このページはこのままにした。(05.4/1加筆)
(了)
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