露国の蝶々(てふてふ)
〜サーシャ・アブト〜
サーシャ・アブトは“蝶”の動きをもつ人である。
男子で蝶をイメージさせる人って、めったにいないと思うが・・。
あのヒラヒラと華麗だが、ぐらりともしない安定した姿勢の、得意のキャメル・スピン。ふわりと両腕を上げ、首をのけぞらすしぐさだけで絵になってしまう。ほかの選手がおなじポーズをやっても、ただ“ああ、腕を上げてる”としか見えないのに、サーシャがやると、なにやら意味ありげな気配がそこに生じる。これぞ美貌の威力というものだろう。
あの細くて柔らかそうな栗毛が波うつのをスロー再生で見ると、演技そっちのけで見入ってしまうのは、私だけか?
だから演技のときは、髪、束ねないで欲しいんだなあ。せっかくの最強の武器を。もったいないよ・・。
なにをかくそう私、サーシャの演技はいまのところ、02欧州選と、長野世界選しか見てない。しかしあのSPだけでも、なんど見直したことか。見てると身ぶるいが出てくるほど、好き。哀愁ある民族音楽と、その調べそのもののような動きと、衣装と。
あの黒地に銀・青のライン入り衣装で、サーシャがリンクに登場した瞬間から、空気が変わる。なにやら涼しげな、とくべつな香りがしそうではありませんか!
独特のリズムをきざみつつ音楽がはじまり、サーシャが動き出すと、さらに香気がたかまる。腰をちょっとひねったり、腕ごと上体を投げ出すような動作をしたりすると、キラキラ細かい銀の鱗粉(りんぷん)をこぼしながら飛びまわる蝶が、見えてくる。
サーシャの場合、「演じる」とか「滑る」とかいうより、「舞う」っていう表現のほうが似合う。
あ、そうか・・あれは蝶が舞い飛んでるんだ。
ラストがスピンでなく、ストレートライン・ステップで終るプログラムはめずらしいし、あのあたりの、音楽に乗った歯切れのいい動きはとくに素晴しい。
ほんとうに彼のきゃしゃな手脚は、昆虫のように、耐えがたいほどせんさいに動く。見てると時々、手の中につかまえて、むしってみたくなるなあ(笑)。
演技中もさることながらキス&クライ、胸もとを大きく上下させて息をととのえてるの見てると、どこかの花にとまった蝶が、羽根をひろげたり閉じたりしてるのを見てる気がしてくる。
ラフマニノフのFPには、悲哀より、しずかな迫力をかんじる。
SPほどの名作とは思わないけど、サーシャならではのプログラムだなあと思う。
衣装は水色の、透ける素材のヒラヒラのブラウス、女子でも似合う人ってかぎられそうなほどのデザイン・・。
サーシャは、絹糸のようだ。細くてしなやかで、底光りして、そして、強靭。ピンと張った絹糸。一見なよなよして見えるのに、芯にふしぎな強さがある。
02欧州選FPのときはとくに、スローVTRで見ると、鬼気せまるすごい形相で最後のスピンしてたのにおどろいた。それをふくざつな顔で拍手しながら見守る、暫定トップのヤグディンもよかったし、あれは2人ともに、強烈に“男”を感じる、貴重な映像だった。 ランが多いの、ジャンプの助走が長いの、だからジャッジに点がもらえないのとウワサに聞くが、そのランや助走が、思わず見とれてしまうほどキレイなんだからいいじゃん、とシロートの一ファンとしては思ってしまうのだった。まばたきも惜しい、眼の保養だね。
長野世界選のEX、サッチモの「What a wonderful world」って曲じたいも好きだし、お袖をまくったチェックのシャツにサスペンダー、帽子をかぶったアメリカのカントリー・スタイルで、ポケットに手を入れて登場したのは意表で、新鮮なおどろき。
この大会でアマ引退って聞いてたから、さいしょ見た時は泣いた、泣いた。涙にかすむ眼で、ひっしでサーシャ得意のキャメル・スピンを眼にやきつけておこうとしたっけな・・。
あとで引退撤回というか、やめるのやめた、というの聞いて、この演技をどうとらえていいのか判んなくなってしまった・・ので、これについては、ここまで^^;)
しかしいつ見ても、どっから見ても、つくづく可愛い子ちゃんだのぅ〜(^.^*)
サーシャは赤ちゃんのころから可愛かったろうし、子どものころはもちろん可愛く、二十代のいまも可愛くて、おっちゃんになっても、じいちゃんになっても、それぞれの年代なりに必ず可愛いだろうな、と思わせる顔である。第一印象は一言でいうと“手乗りウサギ”だった(^o^)゛
こんな清楚な美貌のもちぬしに(こんな表現の似合う男もまた、めったにいない)兵役があったなんて聞くと、せつなくなってくる。たぶんサーシャに世界一似合わない衣装って、軍服だと思うから。
・・そんなわけで、サーシャの漢字名を考えてみました。
いわく「紗洒 阿舞人」・・どーだっ? 自分ではけっこう気に入ってんですけど(^^)
追記:
02NHK杯FP「ボレロ」・・私好みではなかった・・。この曲って、伝説のトービル・ディーンや、プルシェンコの名演技が目にやきついてるせいか、すごく間伸びして見えた。あれにはサーシャらしい良さが、私には感じられない。今季コーチを替えたと聞いたが、あれを見るかぎりでは、まえのコーチの方がよかったんでは?
ところで前コーチの出身国は、“アルメニア”が正しいの? それとも“アルバニア”? 某専門誌インタビューによると、前コーチがご自分の国の民謡を探してきた、って話だったけど。ネットであのSPの曲名を調べると“アルメニアン”とあるし、某インタビューには“アルバニア”とあった。これではさすがの私もツッコミようがない。どちらの国も、なかなかツッコミ甲斐のある歴史を持ってるのに・・。(後記:どうやら「アルメニアン」らしいが、まだ確証がない)
(了)
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