キス−キスTOPへ“王子”ヤグディン去りし直後のシーズンの、GPシリーズ。みょうに虚脱感がただよってた。ヤグ風の軽快なトゥ・ステップが、Jrはもちろん、女子にまで大流行したりして、その影響、いまだ、小さからず。
王子の残像 03−04 GPシリーズレポ

朴(ほお)の花、というのがある。
むかしバンカラ旧制高校生なんかが履いた、朴歯の下駄の、あの朴。
泰山木に似た、乳白色の、肉厚な、香りたかい大きな花は、枝先でみんな上を向いて、初夏の陽光をいっぱいに浴びて、盛りにはハッとするほど見事だそうだ。
大きな葉もまた香りがよくて、朴葉餅といってお餅をくるんだりするとか。
満開すぎると、花は見る間にばらばら、ほどけるように、あっというまに散ってしまうという。俳句の季語で「朴散華」(ほおさんげ)という。花が大きいだけに、無常感そのものの劇的な散りかたをするそうだ。よほど山あいに行かないと見られない樹なので、まだ見たことはないけれど。

 朴散華とは希望無し 誇りあり   虚子

ヤグの引退セレモニーを見ながら、こんな句を思い出していた。



GPシリーズ、なんだかんだでぜんぶ見てます。途中経過の感想を。

本田くん・・ロミオ、似合わないと思った。なんだか、彼らしくない。らしくないといえば前季も、彼らしさを感じたのは、EXだけだった。本田くんは、自分を見失ってる気がする。
バトルくん・・かえって無理せず、自分のやれることを黙々とやってきたかれが、本田くんとおなじダグ・リー門下ならではの美しいイーグル、とくいのスピン見せまくりで、新採点システムを味方につけ、コケながらもN杯優勝してたりするあたり、頭が下がる。こういう努力家のイイ子に、たまには陽が当たらないとウソだよな〜。
ティモ(ゲイブル)・・3アクセルは、あいかわらず、胸がすくようですな。こわいくらい、高い。この子の骨格はだいじょうぶだろうか? なんて思いながら、見ていた。
見るからに不調、逆転でN杯2位に終ったのに、妙にしずかな眼が、せつない。この子といい、プル子ちゃんといい、ジュベールくんといい、ヤグの引退が、何人かを急に大人びさせしてしまったような・・? いまが、チャンスだ。そう気分的に割り切れて、気負わずにやれた人が勝つような気がする、今季は。
ジュベールくん・・生彩がないのが、気にかかる。前季にひきつづきのSP『TIME』はいいプログラムだが、去年のほうがよかった。もっともN杯はカメラがおバカで、いちばんの見せ場“カニ歩きストレートライン・ステップ”の時、アップで抜いたりしてた。(調子のよしあしが判らんじゃないか! ちゃんと足元、映してよ☆) FPは去年の『アンタッチャブル』のほうが、明らかによかった。今季のはところどころ、ヤグの『仮面』そっくりの振付があったり、なんかヒヤヒヤ。振付のモロゾフさん、だいじょうぶ・・?
プル子ちゃん・・FP衣装は前季SP『アダージョ』のとおなじと思うんだけど、音楽の選びかたは前季より、格段にいい。リムスキー=コルサコフ『シェーラザード』ときたか! ぴったりだ! なんで今までこの曲、思いつかなかった? と思うほど、かれの動きとフンイキに、はまってる。もしこの曲の旋律についてけるだけの振付と、動きが出来たら、This is プル子、Это プル子、代表作になりえると思う。
ひとつ気になるのは、これまで、ヤグがいない場で、あたしはプル子ちゃんの“本気”を見たおぼえ、ないんだよ・・ぜひ、そのジンクスを破ってくれますように。
サーシャ・アブト・・ジュベールくんより、サーシャのストレートライン・ステップ(とくにSP)に、ヤグの面影を見てしまい、つらかったが、うれしかった。
FP『ミッション・インポッシブル』、黒地に赤いキラキラの衣装、お似合い。前季『ボレロ』みたく、あんまり色をたくさん使う衣装は、サーシャには似合わん。もっと調子よかったらなあ!

たぶんみんなおなじ気持だったと思うが、N杯で中国の高 嵩くんのFP・・よりによって音楽に『仮面』使うとは・・いい度胸だ・・ヤグが二重映しに見えて、見えて、困った。
さいしょのコンボは中国選手らしく、あざやか。このへんですでに(;_;)
ストレートライン・ステップに入るときの曲の切替がヤグとまったく同じ(T_T)
終りぎわのシット・スピンで、あやういほど:o(T-T)o:
そして解説の五十嵐さんの「ヤグディンのストレートライン・ステップ思い出して、どうしても比較しちゃいますね」の一言で、ついに:o(T△T)o: ・・。
もちろん、百も承知でやってるだろうから、この度胸は買う。ジュベールくん、サーシャもおさえての3位はご立派。
ヤグ王子の残像は、いまだ、あちこちにこぼれ落ちてる。いけないと思いつつ、眼が、勝手にさがしてる。もし本田くんがN杯出てたら、もっと見ててつらかったろうな・・。

女子については・・書きたいことがいっぱいあるので、これはまたいずれ。
ペアは、あの4回転スロー・ジャンプの中国ペア、申雪&趙宏博が、抜きんでてますな。さらに進化しててびっくり! 前季の世界選でも、この人たちの演技に大感激したが、まーだ上があったんか〜と思うほど、大充実。ぽかんと口開いて、ひたすら見とれてればいい。こういう人たちをこそ“マエストロ(巨匠)”っていうんだろう。

アイスダンスは個人的に、デュプリューリュ&ローゾン、いちおし。
この人たちは前季たしか四大陸で、仮面つけて蝶々のような衣装で、女性の腰につけたヒモをつかんで男性が振り回しまくる、ド派手なEXやってて、素敵だった。今回「デュプレイユ&ロウゾン」て表記に変ってたんで、一瞬、だれだか判んなかった。「ジュベールくん」と「ユベールくん」の混在もだけど、呼び方は統一してほしいなあ。
ローゾンはきれいな男だが、デュプリューリュにやや、華がない気がする。やはり、アイスダンスは女性が輝いてないとね〜。デンコワにも、それは言えるけど。

デンコワ&スタビスキーの、情緒過多な演技、重くて悲惨なヘンデルの曲がしんどくて、正直、あまり好きじゃなかった。が、N杯EXで村主さんを「もっと滑っておいでよ」とからかってるスタビスキーが可愛くて、ちょっと印象が変った。スタビスキーの衣装(サーシャがラフマニノフ滑ったときの衣装みたいの)、ヒラヒラなびく飾りが、ときどき顔にかぶさって滑りにくそうで、ひやひやした。危なくないのか、あれ?

それにしても・・アイスダンスも、ロバチェワ&アベルブフの、華麗ないたいたしさ、ボーン&クラーツの、キュートで、革新的で、ときどき濃厚な色気が、恋しい。
これもまた、過ぎ去りし快感を、眼が覚えてて、勝手にさがしもとめてるのが、せつない。まるで、ききわけのない幼児のようだ、あたしの眼。
03.11/30記
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