キス−キス TOPへ美緒さん、うわさのジャパン・オープン、コンペも、ガラも見に行った、貴重な生観戦レポ。それは何より、ヤグディンの、ソルトレイクから4年めの『仮面の男』/『ウインター』目撃情報なのだった・・。
妖精王の復活(06年ジャパンオープン観戦記・ガラ篇)
〜さいたま発・美緒さん報告〜


ジャパン・オープン夜の部、ガラでのヤグディンは、コンペの時とは、まるで別人だった。

「SWAY」、いつもの帽子をかぶってスタンバイした彼は、小気味よいまでのスピードとリズム感で滑りきった。
その演技力、盛り上げ方、表情、音楽とぴったり合った、コミカルな動き!
これぞ私たちが大好きな、そしてよく知っているアレクセイ・ヤグディンだ!
彼は、おそらく今日はじめてスケートを見に来たであろう観客まで、大喜びさせた。

しかし、涙が出るほどの感動は、その数十秒後にやってきた!

アンコールのため、リンク袖から戻ってきた彼は、
あの見慣れた白と黒の衣装―ウィンターの衣装を身にまとっていたのだ!
冬の妖精王は、ここに復活した……。

となりの席の女性は、両手で口元をおさえ「ウィンターだ……!」とつぶやいた。
「ウィンターですね……!」私も、返した。

吹雪を予感させる、あの風の音と共に、BONDのストリングスが聴こえてくる。
最初の氷のかけらを、ヤグディンが宙に投げる。

手のひらで、空からふわりと舞い降りた雪をすくうような、あの動作。
現役時代には、トリプル・アクセルを降りた後に見せていた、両手をフワッと広げる振りつけ。
つむじ風のような、最初のサーキュラー・ステップ。
そして……忘れもしない、4年前の私をひと目でとりこにした、最後のストレートライン・ステップ!

すべてが色あせることなく、スーパーアリーナに、復活したのだ。
ちがうのは、ジャンプの種類だけ。(この日のジャンプは、すべてトウ・ループだった)
でも、そんなことは、どうでもいい。

パフォーマンスは、齢とともに、余裕と、円熟味を増している。
そして感動は、あの当時そのまま……いや、それ以上だ。

ああ、やっとこれを生で見ることができたんだ!
私は、夢見心地のまま、家路についた。

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あの1日は、何だったんだろう?
ものすごく大きくまとめると、あの試合を見たことで、私は(いまさらながら)やっと受け入れることができたのかもしれない。
アレクセイ・ヤグディンのアマ引退を……そして、彼の新しい人生を。

自分はすでに理解している。受け入れている。
……とは思っていても、心のどこかでいつも、
「この試合にヤグが出ていれば……」
「ヤグディンがいたころは……」
と、彼のいたころの試合場の熱狂を、無意識に追い求めていたのではないだろうか?

現在でも、彼以外には、ほかに1人もいないと思う。
あんなふうに、試合会場にいる観客全員に語りかけるかのように、ありったけの情熱をぶつけて滑れるスケーターなんて……。
そして、プロになってもアレクセイ・ヤグディンは、パフォーマーとしてやはり、今のところ世界一。
それがわかっただけでも、いい、と思う。

あんなにもジャンプが跳べない、あんなにもスピードのない「仮面」。
それでも、びっくりするほど丁寧に滑っている彼を見て、
私はなぜか、彼が世界一であることを、再確認したのだった。

もう、アマ時代、コンぺでの彼を見なかったと後悔するのは、やめようと思う。
スケーターとしての彼を、この先、何年見続けられるかだって、わからないのだから……。

今回の彼のチャレンジが何だったのかは、いくら考えても、わかりはしない。
おそらく本人にしか、わかりはしないのだから。
でも、あんがい本人、「どうってことないよ」という表情で、軽く答えるかもしれない。
「新採点方法ってどんなものか、やってみたかったしね」なんて……。

なぜ今回のコンペは「仮面の男」にしたの? と彼に訊いたら、なんと答えるだろう?
「コンビネーション・スピンのレベルを上げるには、音楽のつなぎを変えないと、むずかしいんだ。
そういう意味で、『仮面』の音楽が、いちばん編集しなおしやすかったんだよ」
なんて、びっくりするほど散文的な答えが返ってきそうな気も、する……。
(以上)
2006.5/14 報告
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